出産と甲状腺の病気について
ドクターコラム
妊娠中はおなかの中の胎児を受け入れやすくするためお母さんの免疫力は低下します。
しかし出産後はこれが逆になり免疫力が高まります。
甲状腺の病気は自己免疫の病気(体を守る免疫はウイルスなどの体にとって悪いものをやっつけるためにあります。この監視の仕組みが失調しいわば免疫力が高まり、自身の体を傷つける病気)で免疫力が病気に大きく影響します。従って出産後2月から10月ぐらいの間に甲状腺の機能異常が起こりやすくなります。
大多数の場合は次の二つです。破壊性甲状腺中毒症とバセドウ病の増悪か発症です。
むつかしい名前のついている前者ですが甲状腺が炎症を起こし組織が壊れ甲状腺に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中へ漏れ出てホルモン過剰になります。
そのためどきどきしたり汗がよく出たりします。これはすでに橋本病(慢性甲状腺炎)という病気の方に起こります。すでに橋本病と診断されている方は定期診察を受けられていますのでこの変化には主治医の先生がすぐ気づかれると思います。しかし、これをきっかけに橋本病が見つかる方もおられ注意が必要です。
この病気はほとんどが治療が必要なく治りますが正しい診断と経過観察が必要です。
一般の女性の出産後に(上で述べた方がほとんどですが)5~10%の頻度で起こると言われています。
今まで甲状腺の病気と診断されていない方で出産後、体調不良、抑うつやいわゆる〝産後の肥立ちが悪い〟と言われる方は甲状腺の検査をうけられることをおすすめします。