低血糖と血糖値を知る方法 No.5
ドクターコラム
「血糖認識トレーニング(BGAT)のエッセンス‐情報は力なり」
今回は外部血糖キューです。それは何が血糖を変化させるかに関する情報のことです。3つあります。
1)インスリンと時間;
注射しているインスリンがもっとも血糖に影響します。その影響を知るツールがインスリンカーブです。
それは使っているインスリンの種類、量や注射時間から推定するインスリン効果(どの時間にもっとも効いていてどの時間に効果がなくなっているか)を示すカーブです。
BGATでは個別に作成できるよう訓練されます。そのために必要な情報はインスリンの作用開始時間、最大作用時間、作用持続時間などです。
具体例を示します。
図に速効型インスリンを午前7時と午後6時にそれぞれ5単位と4単位、および中間型インスリンを午前7時と午後11時にそれぞれ25単位と4単位注射している方のインスリンカーブを示したものです。
実線で正味のインスリンの効果の強さを示しています。
正午から午後5時まで午後8時頃にインスリンがもっとも良く効いていることがわかります。
この時にもっとも血糖が下がりやすいことが予想できます。逆に深夜にはインスリン効果がないことがわかります。
このカーブの作成法を知ることは私にとっては目からうろこが落ちる思いでした。
皆様はいろいろな種類のインスリンの作用開始時間や持続時間を示す、これとちょうど鏡面関係にある図になじみがあるかもしれません。私たちはそれを使ってインスリン効果を説明していました。
しかし、このインスリンカーブの方がどの時間に血糖がどうなるかわかりやすいと思いませんか?
今インスリン治療に際してこのインスリンカーブを用いた説明がもっと必要であると考えています。
2)食事;
このキューがもっとも分かりやすいかもしれません。
食事をすればもちろん血糖が上がります。それではどのような食事でどれくらい血糖が上がるのでしょうか?
ここでカーボカウントを思い出してください。その目的の一つは食後血糖をコントロールすることでした。
それは裏返して言うと血糖、特に食後血糖の予測の武器になるということです。
食後血糖を決めるのは食事の炭水化物量です。Coxらのテキストによると1グラムの炭水化物は血糖を平均3mg/dl上昇させるとなっています。
今ここにコンビニで買ったおにぎりが一個あります。成分表示によると炭水化物量は36グラムですので血糖を約100mg/dlあげることになります。
3)身体活動;
3つ目のキューです。
運動は血糖を下げる方向に働きます。ただ運動により血糖が上がる場合もあるので注意が必要です。
このことは自身のインスリンを作る力が落ちている方が高血糖の時に強い運動をした場合に当てはまります。
二回にわたり血糖認識トレーニング(BGAT)の内容をまとめました。
少しむつかしかったですね。しかし、BGATのすべてを実践する必要はありません。
糖尿病と歩む毎日の自己管理に役立つヒントが多かったと思います。ひとつでもふたつでもそのヒント
を生かしていただければと思います。