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低血糖と血糖値を知る方法 No.2

ドクターコラム

「今すごくおなかが減っているのですが、これって低血糖?」

 

前回低血糖症状について述べました。
前回の表はCoxらの「血糖認識トレーニング」(診断と治療社)からの引用です。
血糖が下がりすぎたとき、症状に気付きそれが低血糖であるとわかること(認知)は考えられているほど簡単ではありません。
それは血糖が実際に下がってから低血糖の認知までに多くの要素が影響するからです。 Coxらはその過程を4段階に分けています。

表にはその段階と、それに影響する要素を示しています。Cox らがDiabetes Careに 1993年に掲載した論文を参考にしています。

第1段階は血糖が下がることによる身体の反応です。拮抗ホルモン(アドレナリン)の分泌と、脳の栄養低下です。
最近の血糖コントロールが良いと、これらの反応の閾値(どこまで下がると反応が惹起されかを示す値)が下がることがわかっています。
つまり、治療がうまくいっている方が低血糖の反応が出にくいのです。
また、24時間以内に低血糖を経験していると前者の反応が起きにくくなります。前の反応でアドレナリンが使われてしまうのです。
低血糖を起こすと次の低血糖に気付きにくくなるのです。やっかいですね。
従来から低血糖に鈍くなる原因として糖尿病神経障害の一つである自律神経障害が強調されてきました。
Coxらのこのモデルによると、拮抗ホルモンの反応のレベルに影響するだけです。多くの要因の一つに過ぎません。

第2段階はそれに対する症状の惹起です。分泌されるアドレナリンの量が多いほど、また脳の栄養不足の程度が大きいほど強い症状が出ます。
そのときの体のいろいろな条件も影響します。例えばお酒を飲んでいると症状が出にくくなります。

第3段階は症状に気付くかどうか(発見)です。まず症状の特徴によります。
額の汗より動悸の方が「あれ?」と思いますよね。ボヤーとしている方が気付きにくいです。
今日は朝食が少なかったので注意している時はわかりやすい。
Coxがよく挙げる例なのですが、忙しく注文をとっているウエイトレスは低血糖の中枢神経症状に気付きや
すい。注文を間違って「あれ?」と思うわけです。

第4段階は症状の正しい解釈です。症状に気付いてそれを低血糖であると正しく判断することです。
前回述べた症状を知っていなければなりません(知識)
空腹感は低血糖と解釈されやすいですが、前の食事からどれだけ時間が経っているかがより関係している
ようです。昼食を食べてからの時間がいつもより経っていると低血糖でなくてもおなかが減りますよね。
低血糖の症状に気付いているのに低血糖と認めないこともあります(否認)
例えばそれは、一生懸命やっている自己管理の失敗(薬、食事と身体活動のバランスを崩した)を意味する
ので失敗を認めたくないと考える場合です。

すべての要因について説明できませんでした。
これらを見ると、血糖が下がって症状がわかるのは当たり前ではなくむしろ僥倖の賜(たまもの)とまで言い
たいぐらいです。
しかし、私たちは血糖を自己のコントロール下におかなくてはなりません。
低血糖の認知に及ぼす要因を理解することはそのための武器を与えくれるものです。

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