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糖尿病の飲み薬 No.3

ドクターコラム

「期待される糖尿病の薬―インクレチン関連薬―」
 

インクレチンの生理の解明からそれを利用した薬の開発まで長い距離があります。
前回にインクレチンにはGIPGLP-1の2つがあることをお話ししました。
糖尿病の患者さんに試験的に試してみるとGLP-1はインスリン分泌を促し血糖を下げましたがGIPにはその効果は見られませんでした。

そこでGLP-1が創薬の対象となりました。
しかし、開発までには多くの乗り越えなければならない壁がありました。
図にGLP-1の分泌、作用および代謝のしくみを示しています。

小腸から分泌されたGLP-1は膵β細胞の表面にある入り口(受容体といいます)を介して作用し、インスリン分泌を刺激します。
しかし分泌されたGLP-1はDPPⅣという酵素によりすぐに切断され、働きを失ってしまいます。
GLP-1は化学構造上ペプチドホルモンに属します。複数のアミノ酸がつながったホルモンですぐに分解されるので飲み薬には出来ません。
注射薬になるのですが(インスリンも事情は同じで、患者様は注射されています)そのものを注射してもDPPⅣによりすぐに切断されて効果が続きません。
このような事情を前にしてどのような工夫をしたらいいと思われますか?
結果としてGLP-1作用があり切断されにくい構造のホルモンを見つける試みと、DDPⅣの働きをじゃまして自前のGLP-1の作用を長持ちさせる工夫が成功しました。
前者をGLP-1受容体作動薬(インクレチン・ミメティク、GLP-1の働きをするという意味)、後者をDDPⅣ阻害薬(インクレチン・エンハンサー、インクレチンの 働きを強めるという意味)と呼びます。

受容体作働薬のストーリーを少し補足します。
1992年にJohn Eng先生がアメリカオオトカゲの唾液からGLP-1と52%構造が似ている exendin-4を発見しました。実はインスリン分泌を促す作用を目印にして見つけたのではなく全く別の作用をする物質を探索する過程で見つかりました。
これがGLP-1受容体に働き、またDPPⅣという酵素による切断を受けにくいことがわかりました。
それが注射薬となったのがExenatideと一般名で呼ばれているものです。(このグループの一般名のカタカナ表記が統一されていませんので英語名で表記しています。 カタカナ名が確定すれば訂正します)
図にはDDPⅣ阻害薬の作用点も示しています。DPPⅣ阻害薬にはSitagliptin 、Vildagliptinなどの薬があります。
これらの薬剤は日本ではまだ使うことが出来ません。 治験(新薬の効果や安全性を検討する臨床試験)が終了し厚生労働省に認可を申請した段階です。期待通りの薬であることを望んでいます。

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